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12. アメリカザリガニとウシガエルの駆除対策について考える 2014

1.概要
 「いのちの森」は、1996年4月に京都市下京区梅小路公園内に開設された、建都1200年のメモリアルシンボルである。京都駅近くの自然の残らない都市の中心に、面積約0.6haの人工の緑地を創る。一見里山の風景をほうふつとさせる、緑と水の流れ、雑木林を主体とした疑似自然公園をめざした。その雑木林は、野鳥や昆虫が生息する「いのちあふれる森」、「ビオトープ」、「生き物たちの聖域」と紹介され、期待が寄せられた。

 疑似自然公園を創るため、植物の他に土を運び、水路を作り、京都の里山的原風景を復活させ、昆虫や野鳥、希少な植物の保存場所、希少な魚類の命をも育む「ビオトープ」(聖域)を目的とした。

 この公園内を流れる動力を使った人工水路は3つあり、その内の1経路が「いのちの森」の中を流れている。この流れには、かつては植栽された希少水生植物が見られたが、現在は見る影もない。その主要原因は、特定外来生物として駆除の対象となっているアメリカザリガニとウシガエルの生息である。これらは、侵略的外来種ワースト100に選定されている。

 この2種はともに雑食性で、魚類の他、底生生物、水草を食べつくすことで、全国の湖沼ばかりでなく、各地の人工ビオトープでも大きな問題となっている。

 京都市が創設した「いのちの森」は、各地の環境緑化、ビオトープ建設のモデルとして注目を浴び視察が絶えない。そうであるならば、ビオトープの管理面においても、その方法を発信すべきと考えた。「有害外来生物指定種の駆除」を軸に、その方法の効果や弊害についてまとめてみた。

2.「いのちの森」水路の生物相
 現在「いのちの森」を流れる水路に生息する生物は、すべてが有害外来生物指定種とされ、駆除の対象となる生物が占有している。水路が河川につながっていないことから考えると、これらの移入は、すべてが持ち込まれて放たれたとしか考えられない。
 「いのちの森」を「京都府、京都市域に生息する在来種のためのビオトープ」とするならば、特定外来種ではないものの、他県産の生物の移入は認められず、確実に排除(駆除)する必要がある。

  「有害外来生物指定種」 : アメリカザリガニ /ウシガエル /ミシシッピアカミミガメ /タイワンシジミ /カダヤシ
  「他府県産の種」: ホタル /カワニナ

 京都産ではない、DNA、発光間隔の異なる他府県産を故意に放虫された。共に産地不明で、カワニナはホタルの餌として初回に同時放流されたという。当初、水草についていたかは不明である。
 初回のホタルは、関係者による購入された関東産ホタルであるらしい。また一旦消滅の後、関係者により、産地不明の成虫が放虫されたようで、現在も継続した生息が確認されている。
 魚類の生息は、「いのちの森」の外側水路に、一般市民が放したと考えられるコイとキンギョが生息している。

3.水路の現況
 現在の水路は、雑食性のアメリカザリガニとウシガエルが生息することで、当初移植された希少水生植物や水中に育つ藻類も見当たらない。アメリカザリガニとウシガエルの直接的な天敵は、水場に姿を見せるサギとカワセミであると考えられるが、特定の場所でしか捕食しないと考えられる。

 機械的に循環され、場所によってはきれいな流れの情景を持つ人工河川を作ってはいる。しかし、落葉の分解による栄養を利用して育つ水生植物や藻類がないことで、富栄養化と汚濁の状況となっている。

 元々、アメリカザリガニはウシガエル(食用ガエル)のエサとして移入された。アメリカザリガニは産卵数が多く、自然界では、極小の幼生はトンボのヤゴにまで捕食される。しかし大きく育ったアメリカザリガニは、やがてヤゴや水生昆虫を捕食するようになる。大きく成長したアメリカザリガニは、ことごとく水草を切断する。この行動を、「アメリカザリガニがトンボのヤゴや魚の稚魚を捕食する際、発見して見通しを良くするのだ」という意見がある。しかし、生物循環の点から考えると、枯葉や水中で枯死した植物、アメリカザリガニが切断した植物は、水中のプランクトンなどの微生物や水生昆虫が分解利用することも可能である。そうであるならば、アメリカザリガニが自らの食料を生産するために、水中の植物を刈り続けるのだとも考えられる。

 「いのちの森」の水路が、水中の植物が完全になくなったと言えるほどの状況であって、水棲生物のビオトープとするためにほど遠い元凶であるならば対策を講じる必要がある。

4. アメリカザリガニの天敵
 「大型のアメリカザリガニの捕食者」というキーワードでインターネット検索すると、投稿された写真を容易に見る事ができる。それを見ると、サギやカワセミ、クイナなどの鳥類、コイ科の魚類、ブラックバス、ブルーギル、カムルチー、ナマズなどの魚類、アカミミガメやウシガエルが捕食する様子があった。

5.アメリカザリガニ、ウシガエル駆除方法
 いくつかの方法について考えた。その方法と予測される成果と共に議論をしてみたい。2種を完全に取り除く方法を「リセット」と呼ぶならば、「いのちの森」が誕生して18年間経過することも考慮し、最善の方法を取るべきである。以下に、駆除の方法について述べる。

①川干し

方法: 水を長期間にわたって抜く・・・水路の水を止め、完全に排水する。アメリカザリガニとウシガエルの産卵期や夏季に、長期間、完全な川干しをおこなう。水が残るところは目視駆除となる。

利点: 薬品も使用せず、最も優しい対処法と考えられる。建設後18年の間に生息しているだろう水中の生物群集(水生昆虫、ベントス)にも影響が少なく、水辺の植物群集にとってもストレスを与えないだろう。
 川干しの際、随所に傾斜を付けて、底となるべき部分に「水たまり」をこしらえる事ができれば、「潮溜まり」での生物採集のように生物の捕獲が容易になるだろう。

欠点: 水が抜けて完全に乾燥しない限り、アメリカザザリガニの幼生や比較的小型のサイズは確実に目視捕獲しないかぎり駆除できない。


②-A. 捕獲カゴの利用とベイト (角カニカゴ、亀甲両口モンドリを仕掛ける)

方法: カニカゴや網モンドリを設置し、下記のエサを入れる。

利点: 薬品を使用しないこと。大型のアメリカザリガニやウシガエルだけは捕獲できる。

欠点: 小ぶりのアメリカザリガニやオタマジャクシは網目から抜けて逃げる。継続した駆除が必要な上、完全駆除は不可能。

  <カニカゴ> 魚類の他、カニ、カメ類の捕獲に使用。           

  <両口モンドリ> 魚類捕獲用で、入り口は両側ともモンドリ形状    http://www.hoga-kyoto.com/syouhinnphoto-p/ryouguchimondori1.JPG

中に入れる餌の種類と誘引される生物・・・知見とインターネットによる情報の紹介
  • 鳥ガラ   カメ類全般
  • 鰹節を添加したヌカ団子  アメリカザリガニ
  • 鰹節と焼きヌカにサナギ粉を混ぜた団子  アメリカザリガニ、ブルーギル、フナ類
  • 魚肉ソーセージ・・・カメ類、カエル
  http://www.nat-museum.sanda.hyogo.jp/research_collections/no19pdf/19-5.pd

②-B. 水中コドラートネット

方法: 四万十川の柴漬け漁にヒントを得、環境調査関係者にお教えしている手法。
1m角の開口部のあるネットの中央部にエサ物質を置き、一定時間(期間)の後引き上げて捕獲する。


②-C. 捕獲カゴ利用で想定される結果
 全国の湖沼で使用されるが、捕獲カゴだけで全滅させた地域は皆無であると推測できる。

6.塩素の投入
 カゲロウやカワムシ、ユスリカなどがため池や小型の貯水池で大発生した場合や、水槽内の清浄殺菌、魚類の飼育施設、水族館の菌死滅殺菌、動物園、哺乳類、家禽の飼育施設などでも、この方法が利用される。

方法: プール用次亜塩素酸ソーダ(カルキ)の大量投入を繰り返し行う。できれば、濃度は道水よりも高めとなること。アメリカザリガニやウシガエルの生息確認が見られる地点の流に散布する。排水しないままでおこなうなら、「いのちの森」の水路の流れを作っている循環系ポンプ室の「ストレーナー」にカルキを入れる。

時期: アメリカザリやガニウシガエルの産卵期となる春季が効果的。

成果: 高濃度塩素を大量投入することにより、水中にいるアメリカザリガニのほか、ウシガエルのオタマジャクシ、ホタル、カダヤシを駆除できる。

影響: 検証しないとわからないが、利点と欠点を併せ持つことに間違いないだろう。

植物に水道水で水やりしても、枯れて死ぬことがほとんどないだろう。しかし、野鳥に関しては、塩素濃度が高いと気づけば飲みには来ないだろう。それよりも、18年間の間に水中に存在した水生生物、底生生物(ベントス)、微生物までも、完全に死滅させてしまう可能性が高い。


7.水の清澄度を高める工夫

方法:  1. 川幅を満たすロープに、60㎝程度の長さに切ったスズランテープをほぼ30㎝の位置でくくる。
        たくさん取り付けて、それぞれを細かく裂く。

 2. ネットを張りヤナギ藻やセリなどの根を絡ませて沈める。

 3. 藻やヨシ、ツルヨシを植える

成果: アンモニアや窒素を吸収して育ち、水の富栄養化を減少させる。

欠点: 藻やヨシ、ツルヨシを定期的に刈り、水中から取り出す。

成果: どの方法も効率よく、窒素、炭素、アンモニアの水中からの取り出しに有効と考えられる。


9.今後の課題 掲示板の設置
  • むやみに生き物を放さない。
  • 有害外来生生物について掲示をする。

10.結論
  • アメリカザリガニについては、従来行われていたザリガニ釣りイベントでは到底完全駆除はできない。また捕獲カゴを使用しての駆除も、網目から考えても幼生や小型のサイズが抜け出し、完全駆除はできない。
  • ウシガエルは、アメリカザリガニの個体数が減少すると、捕食できないことが原因となり、個体数の減少につながるが、これも完全駆除にはつながらない。
  • 卵やオタマジャクシの時期に、高濃度塩素剤(プール用カルキ)と大量投入し、水道水以上の塩素濃度にすることが望ましいが、水中に存在するかもしれない微生物、底生動物には適さない。
  • アカミミガメについては、鶏ガラを餌としたカニ籠でかなり期待できるだろう。また薄い塩素濃度では死亡しない可能性がある。さらに塩素剤が投入された折、水から陸に上がる事ができるが、数日以内には水中に戻らざるを得ない。塩素剤の継続投入で、駆除できる可能性が高い。
  • タイワンシジミやカダヤシは、高濃度塩素剤を投入すれば、駆除は簡単に可能だろう。しかし、長期の川干しを実施するなら、薬品を使用しなくても駆除が可能だろう。

11.総合的結論
 塩素の大量投入は、有害外来生物指定種を手っ取り早く、完璧に近い駆除が可能かもしれない。しかし、建設後18年経過した「いのちの森」には、バクテリアや菌類、ユスリカ、その他未確認の生物も生息しているだろう。これらは、乾燥にも耐え存続するが、薬剤の大量投入には耐えられないだろう。その他の方法となると、真夏に長期間の完全な川干しをすることが望ましい。

 完全な川干しには、夏季に雨が降らない日が10日以上必要であると推察する。その際、給水源を完全に止水し、その上で排水作業をおこなう。さらに完全排水が不可能で、潮だまりや水溜り状に見える場所、いつまでもぬかるむ場所は、水が溜りにくいように傾斜や溝を掘り、水中ポンプなどで排水を促進する工夫が必要であると考える。 

 川干しすることになり排水作業の折には、18年の間に蓄積された水環境の生息動物群の調査をおこない、記録することが必要である。さらに、水面から底までの深さごとの水のサンプリングや汚泥のサンプルを採取し、成分の分析をしておくことも、水生植物の移植や稀少魚類を放流保護する上で意味を持つだろう。

 この文章を書くに当たり、水環境に詳しい先生方や水族館、動物園の関係者の方から様々な助言をいただいた。深く御礼申し上げたい。

12.関連文献
保賀昭雄:「いのちの森の目標像」、「いのちの森のあるべき姿」いのちの森NO.14 2009年度調査報告 京都ビオトープ研究会
いのちの森モニタリンググループ  http://inochinomori.sakura.ne.jp/report/

(2013年度報告書 2014年5月に寄稿)

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